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スズキヨシカズ幻燈画室

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満月ノ晩ノ蒼色幻燈会 ... 始マリ始マリ

ひとり

僕が目覚めたとき雨はもう止んでいた。

空を埋め尽くしていた黒雲母の隙間から、水晶に閉じ込められた金紅石(きんこうせき)の細い管が、僕の横たわる柔らかな草の上にも降り注ぎ始めていた。

どれくらいの時間、僕はこの場所に横たわっていたのだろう。
僕が眠っている間にも雨は降り続いていた筈なのに、、不思議と僕の体は濡れてはいなかった。
温かく濡れる草の上に掌を押しあて、僕は体を起こした。(掌の下からは柔らかく、雨を含んだ土の匂いがした。)

僕は森の中の窪地にいた。

緑色の樹々の葉から地面へと落ちる水滴はみな、金紅石(きんこうせき)を宿し、地面に到達してはじけると、一つ一つが小さな虹の遊色を踊らせた。

僕は雨上がりのそんな光景をただ静かに眺めていた。

なぜ自分がここにいるのかなんてわからない。
もし誰かが「ふっ」と現れて、僕がここにいる理由を説明してくれたとしても、、僕は興味を持って聞かないだろうと思う。 理由の必要ない事がたくさん存在している。 僕がここにいるのも、そんな事柄の一つなんだろうと思う。

「蛋白石の中に遊色が存在するように、、?」
「金紅石(きんこうせき)のなかに太陽の管が存在するように、、?」

いや、、(微笑) そんなに素敵な事ではないかもしれないけどね。(微笑)

でも、、僕はここにいるんだ。

白雲母色の空を見上げて、
もう一度、雨が降り始めるのを待っているんだよ。

ひとり_a0199297_20171148.jpg

               スズキヨシカズ写真作品 『ひとり』
by yoshikazusuzuky | 2011-01-29 00:00 | スズキヨシカズ的アート | Comments(0)

by yoshikazusuzuky