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スズキヨシカズ幻燈画室

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満月ノ晩ノ蒼色幻燈会 ... 始マリ始マリ

『笑う男』と『老いた日の自我像』 その一

スリアは岩塩鉱山に支えられた町でした。

岩塩と言っても食用ではなくて工業用のプラスチック、薬品などの原料として利用される『ポタッサ』と呼ばれる岩塩です。(写真は岩塩が地表に露出し水によって浸食され出来たカタチですね)a0199297_035990.jpga0199297_0344386.jpg











スリアの町の入り口と出口の丘の上には、地底数百メートルの坑道へと続く、緑色の鉄骨で組まれた大きな巻き上げ機がそびえ立ち、スリアの町を見渡しているのです。
スリアの町に生まれた子供たちは小学校の授業で必ず坑道内部の映像を見せられるのだそうです。
子供たちの父親の多くは坑夫なので、小さな頃からそうして何かを学んでゆくのでしょうが、見せられる映像は、現実の苛酷な労働を想像させないほどに美しいのだそうです。
いちど子供たちから聞かされたのは『青く透明なガラスの部屋』の話しでした。
掘り進められた坑道の四方八方全ての壁は岩塩で出来ているため、青く透明な岩塩の層を突き抜ける坑道はライトの光を何処までも吸収して坑道全体が青く輝いているのだそうです。 とにかく、それはそれは美しすぎるお伽話の世界のような映像を見せられたのだそうで、、、その話しをしている子供たちの目は、キラキラと輝いていたのでした。
そんな話しを聞いてしまった僕が坑道に降りたがらないはずはないですよね!(笑)
「降りてみる?」と声をかけてもらって即、二つ返事で緑色の巻き上げ機のエレベーターで(こ、、、怖かったです)(この段階ですでにもの凄い恐怖を味わいました!)数百メートルの地底へ、、、。 そこは! そこは『青く透明なガラスの部屋』などではありませんでした。 砂埃よろしく、塩埃が舞い視界が霞む、塩、塩、塩、塩の熱すぎる地底世界だったのでした。
坑道から出て2、3日は鼻が痛くて痛くてたまりませんでした。
防塵マスク無しでは肺が潰れてしまいますね。
そこは、お伽話の世界などではなく過酷な現実世界でした。

そんな過酷な世界で働き抜いた男の笑い顔のスケッチです。

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               スズキヨシカズ絵画作品 『笑う男』

なんて名前だったっけな? よく僕の画室に遊びにきてたナターリャって名前の娘(こ)の、じいちゃんなんだよね。 名前が出て来ない、、、。 酒やけした赤ら顔と、酒やけした喉から絞り出すようなガラガラした笑い声が印象的なじいちゃんだった。

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そうだ。
そうなのです。
僕はいつもナターリャのじいちゃんを『ナターリャのじいちゃん』と呼んでいたからね。 名前が思い出せないのではなくて、僕は『ナターリャのじいちゃん』の『名前』を知らないのかも知れないのです。(自分の記憶じゃないみたいに話すね)

『笑う男』は僕の中ではこれからも『ナターリャのじいちゃん』という名前で記憶され続けてゆくわけです、、、ずっと。

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   ある夏の夕暮れ、『ナターリャのじいちゃん』とセルベッサ(ビール)を飲みながら、、、。



                                    、、、つづく
by yoshikazusuzuky | 2011-02-27 23:11 | スズキヨシカズ的アート | Comments(2)
Commented by ひめママ at 2011-02-28 00:13 x
「青く透明なガラスの部屋」・・言葉がとっても綺麗・・・but本当に透き通った青が見られるとしても閉所恐怖症のひめママには一生入ることの出来ない世界かなぁ。。。とほほ

ナターリャのじいちゃんとビール・・・切り取られた風景って感じですね~。う~ん、なんと説明すればいいのか・・・写真に写っていない部分も含めた風景があって、でもその部分だけ切り取ったって感じデス。←うっ、当たり前の説明になってる(冷汗)
Commented by yoshikazusuzuky at 2011-02-28 01:04
「切り取られた風景」って好きな表現です。

ひめママさん、こんばんわ。

夏になると町でいちばん古い広場に子供たちが居酒屋を出店するんです。
町でいちばん古い地区に住む子どもたちがその広場の昔は薬屋だった空き店舗に居酒屋を出すんですが、あの頃は当たり前に子どもらにセルベッサを注文してたけど、、冷静に考えると日本で子どもらに酒類販売なんかさせたら大問題になりますね、、きっと。(苦笑)
まあ、スペインなんで、問題無しと言う事で!(笑)
あの「切り取られた風景」の周りには、賑やかな笑い声やら歌声やらが響いているのですよ。
夏の夕暮れ時ってとても素敵な時間だったなあ。
ちなみに夜の10時過ぎまで明るいので(太陽が沈んで夜がくるのが11時頃です)子どもたちは夜中の12時まで道々広場で遊んでいましたね。

まあ、スペインなんで、問題無しと言う事で!(笑)