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スズキヨシカズ幻燈画室

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満月ノ晩ノ蒼色幻燈会 ... 始マリ始マリ

『幻燈博物館所蔵品』(其の参)


       『分針のない壊れた銀時計を持って旅をする象の鞄』をご紹介します。

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               材質不明の小さな小さな旅行鞄です。


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この愛らしく小さな
旅行鞄の来歴は、
不完全ながら『幻燈博物館所蔵品目録』に
記されています。

そして、
その記された内容もまたこの鞄同様に、
愛らしくも不可解なモノなのです。

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『1866年3月13日に記す』
、、とあります。

7歳ぐらいの男の子が一人で、『幻燈博物館』の分厚く重く大きな木製の扉を、振り絞った力を全身に込める様にして押し開けながら入って来ました。
男の子の手には、この愛らしく小さな旅行鞄が提げられていました。


a0199297_1295890.jpgだれかに連れられて来たわけでも付き添いがあるわけでもなさそうに見受けられたので、
不思議に思った切符売りの女性が「坊ちゃんはお一人ですか?」と声を掛けますと、
男の子は床に鞄を置き、その錠をはずして鞄を開き、中から銀色の時計を取り出すと、(銀時計の他には錆び付き色褪せた象の人形が入っているのに切符売りの女性は気づきました)
男の子は無表情にそれを「ことり」と切符売りの女性の前の机の上にのせながらこう言ったのだそうです、、、。

「ぎんのとけいのながいはりをください」

「銀の時計の長い針、、、ですか?」切符売りの女性はその言葉を繰り返しました。

「ぎんのとけいのみじかいはりがぞうにそういいましたのです」
「ぞうはながいはりがないとすすむほうこうをみつけられないというましたのです」
「でもながいはりはみつかるませんです」
「みじかいはりがそういいますのです」
「ぞうもぎんのとけいのみじかいはりにそういいますのです」

「、、、」切符売りの女性はすっかり頭が混乱してしまいました。

それでも男の子は切符売りの女性に返事がないことなどおかまいなしに言葉を続けました。

「ぞうはいかねばなりませんですか?」
「どこへいかねばなりませんですか?」
「みじかいはりがもうすますだそうでした、、、」
「ぞうにもうすますだそうでした、、、」

男の子の言葉が続くうちに切符売りの女性は不思議なことに気がつきました、
鞄の中の『錆び付き色褪せた象の人形』と『分針のない壊れた銀時計』が、、、、




残念ながらもこの先は、、
羊皮紙をネズミが齧ったらしく頁が失われて終っているのです。


そして、この愛らしく小さな旅行鞄だけが男の子の話しの結末を待ちながら『分針のない壊れた銀時計を持って旅をする象の鞄』という名前をもらって『幻燈博物館』に残されているのでした。




『分針のない壊れた銀時計を持って旅をする象の鞄』のお話しの破片です。
by yoshikazusuzuky | 2011-12-10 01:55 | スズキヨシカズ的アート | Comments(0)