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スズキヨシカズ幻燈画室

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満月ノ晩ノ蒼色幻燈会 ... 始マリ始マリ

『つくりびと』第62号

全国100箇所以上の美術館で配布されている
『つくりびと』第62号/2017年9月号(国民みらい出版)が発刊となりますので
ご紹介させていただきます。(福島県内では『郡山市立美術館』と
『諸橋近代美術館』での配布となります)

『キラキラを追いかける子どもたち 3』 〜心の中のキラキラ石〜
と題して8月に『りょうぜんこどもの村・遊びと学びのミュージアム』(福島県伊達市霊山町)
で開催した「石たちのないしょばなし」のお話しを
コラムに書かせていただいております。

もし見かけたら手に取ってみて下さいね。 (微笑)


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 創作活動の視点からこどものみらいを考えるコラム アートガイド・ぷらす

『キラキラを追いかける子どもたち 3』 ~心の中のキラキラ石~ 


「僕は石(鉱物を含む岩石)が好きなのです」

小学校低学年の頃だったと思います。近所で何かの工事があって砕石が小山を作って置かれている場所がありました。子どもですから当然そこを通りかかるたびにそのジャリ山を登ります。(子どもだから当然~は間違いですね。もちろん登らない子もいます。ジャリ山があれば登り、水たまりがあれば入り、高い処からは飛び降りる。僕がそういう子だったと言うだけです)文字通り砂利の山を「ジャリジャリ」鳴らしながら登ったり降りたりを繰り返していたある日、だいぶ崩れて形を変えた小山の中に、太陽光を反射してキラキラと輝く「不思議なモノ」を見つけました。 

それは「石(いし)」でした。手のひらに握れるくらいの大きさでしたので直径は5~6cmくらいだったのでしょうか。半透明と乳白色のガラス質の結晶が織り成す縞模様で覆われた石礫の真ん中は裂け目のような空洞になっていて、その空洞の内部は細かで透明なキラキラするモノたちで満たされていました。僕の心臓はドキドキと高鳴りました。「とんでもない宝物を発見してしまった!」と思いました。後々~ほんとうに長い長い時間が経ってから判ったコトですが、それは水晶(すいしょう)を身ごもった瑪瑙(めのう)の小さな晶洞(しょうどう:岩石に包まれた鉱物内部の空洞に多種多様な鉱物を結晶させている)だったのでした。ちなみに何故、後々にならないと名前や種類が判明しなかったかと言うと、それを見つけたコトを僕は誰にも言わなかったからです。「だってそうでしょう?」僕にとってソレはとんでもない宝物なのですから僕だけの秘密にしなければならなかったのでした。

僕が記憶している限りでこの出来事は、石という存在を意識したファーストコンタクトだったと思います。僕はその瑪瑙水晶をとても大切にしました。お風呂に一緒に入ったし、眠る時は枕元に置いたし、出かける時はポケットにそっとしのばせました。陽の光に透かしたり懐中電灯で照らしたり、いつまでキラキラを眺めていても飽くコトはありませんでした。

何度も引っ越しをして、いつの間にかその石は失われてしまいましたが、あの時からずっと僕の中に「キラキラ」が在ります。移動するコトが無くなってから石たち(鉱物だったり化石だったり)を収集するようになりました。 

現在僕は福島県白河市で、子どもから大人までを対象とした絵画造形教室『かいがきょうしつ リベラ』を主宰しています。教室にもたくさんの石が置かれて在ります。ガラスケースなどに入れて飾ってあるのではなく子どもたちが自由に触れるように素のままで置いてあります。「ゴツン」と床に激突する嫌な音がして石も化石もよく壊れます。でもそれも仕方がないコトです。どんなに慎重に扱っても何かが子どもたちの小さな手から滑り落ちてしまうコトは普通に起こるのです。「だいじなものなんだったらきょうしつにおいておかなければいいのに」と子どもたちから言われます。でも僕にとって価値ある大切なモノでなければ、子どもたちに触れてもらう意味は無いと思います。

二〇一七年三月九日から九月二四日まで、僕の石たちが『りょうぜんこどもの村・遊びと学びのミュージアム』(福島県伊達市霊山町)で『いしたちのないしょばなし』~石が話してくれたコト~と題して展示されています。その会場で、

「耳をすませてごらん 聞こえるかな? 地球のひみつをつぶやいている 石たちのないしょばなしが」

と題してお話し会を開きました。集まってくれた子どもたちは石に直に触れてその重さや質感や透過する光を感じながら石たちの呟く「ないしょばなし」に耳を傾けてくれました。石と交信し地球の秘密を共有した子どもたちの顔は素敵に輝きを増したように思えました。お話し会終了後に、心の中にある「キラキラ」を形にしてもらいました。(発泡ウレタンとアルミホイルが材料です)「子どもたちの心の中にはきっとこんなキラキラたちがたくさん結晶しているのだろうな」子どもたちから生まれる「キラキラ」を見てそう確信します。

大人も子どもも心の中に自分色のキラキラを持っています。そして、そのキラキラが生まれるきっかけとなった出来事も記憶の何処かに記録されています。キラキラたちはずっと信号を送っています。心のアンテナを機能させ、その信号を受信出来れば、日常に起こっている目に見えないたくさんの素敵なコトを「素敵だな」と感じられるのに、と思うのです。


〔巻頭コラム〕

スズキヨシカズ 

1966年3月13日、福島県白河市に生まれる。1986年、スペイン国 バルセロナ市に移住。 カタロニア州文化局、スリア市(バルセロナ県)の後援によりスペイン国内、イタリアなどで制作展覧会活動を行う。1990年、スリア市の古城にてスペインでの初個展開催。1989年、1991年、1992年、サラパレス主催バルセロナ新人賞展3回の入選を経て、1994年12月に帰国、白河市関辺に住居兼アトリエを構える。2005年1月、白河市新白河に『かいがきょうしつ リベラ』を開く。ブログ『スズキヨシカズ幻燈画室』http://suzuky.exblog.jp/






by yoshikazusuzuky | 2017-09-04 00:00 | 繋がる想い | Comments(0)

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