人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

スズキヨシカズ幻燈画室

suzuky.exblog.jp

満月ノ晩ノ蒼色幻燈会 ... 始マリ始マリ

透明標本



、、お医者さんのような白衣を着て、ソファーの背にもたれかかり、腕を組んでいた。くたびれてはいないが、よく使い込まれた白衣のようだった。右のポケットと袖口と胸元に、涙がにじんだような薄い染みがあった。 彼はまっすぐにわたしを見た。濁りのない目だった。中庭からの光が目元を影にしていたが、それでも瞳の形がくっきりと浮き出ていた。 わたしはその印象的な視線から目をそらすことができないまま、つぶやいた。そして一度深く息を吸い込み、言葉を選びながら続けた。

「つまりここは、何かの研究室、あるいは、博物館のようなものなのでしょうか」

「いいえ。全く異なります」 あらかじめわたしの質問を予測していたかのように微笑みながら、彼は首を横に振った。 「ここでは、研究も展示も行われていません。役割は、標本を作り、保存すること、ただそれだけです。」




今朝、、
凍った車の窓ガラスが、
効き始めたヒーターの熱で溶けてゆくのを眺めていたら、
ふと、、
ある小説の中の、この一節が、
(一瞬だけ、、)
頭に浮かんで消えて行ったのでした。

溶けたフロントガラス越しに見えた大地は、
真っ白く霜柱に覆われていて、
上り始めた朝日の中で「しゃりしゃり」と細い音を立てながら、
お互いのカラダを支え合っているようでした。


『透明標本』みたいでしょう? (多少の色彩調整を加えておりますが)

透明標本_a0199297_10505724.jpg

透明標本_a0199297_10511277.jpg

複雑に絡み合う微細な組織が透けてしまうと、、
骨格は現れてくるのです。
しかしその骨格もまた、
繊細で微弱なモノタチによって構成されていて、
何時かはソレラも、
透けて見えなくなってしまうのです。

「何が残されるのでしょう?」

全てが透けて見えなくなってしまったら、、
そこには「透けて見えなくなったモノ」が、
残されるのでしょうか?


(微弱なる微笑み)



何のご報告もしないままに、
透明標本_a0199297_19193867.jpg
白河美術協会展は、
透明標本_a0199297_19202594.jpg
透明標本_a0199297_1920154.jpg
透明標本_a0199297_1920336.jpg
透明標本_a0199297_19204894.jpg
最終日を迎え、
透明標本_a0199297_19225241.jpg
透明標本_a0199297_1923452.jpg
終了しました。

搬入風景を写した写真も、
透明標本_a0199297_11233723.jpg
透明標本_a0199297_11234853.jpg
透明標本_a0199297_11241451.jpg
ファイルに取り残され、
使わないままに、、
展覧会は終了してしまったのでした。

写真に残される作品が、
代わり映えもせぬ同じ作品ばかりなので、
自分で自分に嫌気がさし始めているのです。
「なにをちょこまかうごきまわっているんだい?」
「そうすることになんのいみがあるんだい?」
「じぶんのことにじかんをつかうべきではないのかい?」
「じぶんをみてごらん?なにもさきへとすすめられてはいないじゃないか?」
「えかきはやめたのかい?」
たくさんの声が聞こえます。
(20代後半のある時期までつねに頭の中で誰かが喋り続けていた)
(一人のヒトの喋り言葉が幾重にも重なり合って聞こえ続けていた)
僕はすべての声を受け入れます。
受け入れますが、、 しかし?
しかし、理解するコトは不可能です。
でも?
でも、、、 それは仕方ないコトです。
僕は僕なので仕方ないのです。
僕の存在理由は僕自身が決めるから、
「放っておいてほしいのだ」
、、と僕はその声に応えます。
「僕と、僕のやっているコトが気に入らなければ、
目を閉じて僕を見なければいい。」
ただそれだけのコトです。
(単純で簡単なコトでしょう? 微笑)
「僕と、僕のやっているコトがほんの少しでも気にかかったとしたら、
しっかりと目を開けて僕のすることを見ていてください。」
僕の行為が誰かに誇れる行いかどうかは僕にもわからないのです。
でも、僕は、、
少なくとも今の僕は、ただ我がままなだけの僕ではない。
僕も少しは大人になっているのです
「僕は誰にもなれないし誰も僕にはなれない」
それが大前提です。
何の話をしているのか?
そんなコト僕にわかるわけないではありませんか。
けれど僕は「ちょこまか」と動き続けるのです。 
そうするコトしか、今の僕には思いつけないのです。
今の僕は「自分のための時間」と言う概念を(愚痴はこぼしますが)受け入れられる(受け止められる)精神状態にはないのです。
同じ場所で「ばたばた」と足踏みしているのが今の僕であり、今の僕に出来る精一杯です。
でも、、
「絵描きはやめません」 (自己嫌悪)
精一杯やっているのに「自己嫌悪に陥る」と言うのは、
精一杯やっていないからですね。
「叫んだら声は誰かの耳に届きますよ」
いや、、 きっと届きませんね。
「なぜ?」
なぜなら「ぼくはさけばないからです」 (微笑)
ナゼナラ(ボクハサケベナイカラデス) (ビショウ)

「納得してもらうしかありませんね」

仕方のないコトなのです。



5日(月曜日)の午前中は、ヨシト君の教室でした。

ヨシト君の『マラカイト公園』第10作目は、
透明標本_a0199297_2081660.jpg
『シャムワニ』でした。
ヨシト君オリジナルの、、
透明標本_a0199297_20192822.jpg
サイン(「オリジナルのサイン」って変な言い方かな?)が入れられ、
ヨシト君オリジナルの、、
透明標本_a0199297_20231260.jpg
キャラクターシールが貼られて、
『マラカイト公園』第10作目の『シャムワニ』が、
透明標本_a0199297_2024643.jpg
完成したのでした。



(^〜^)




今夜は何だか変な気持ちの夜でした。




おやすみなさい。




(微笑)
by yoshikazusuzuky | 2012-11-06 01:30 | 記憶の欠片 | Comments(0)

by yoshikazusuzuky